縁の下のもち

読んだ本の感想や、日々感じたことなど書きます。

伊坂幸太郎 ゴールデンスランバー


読了しました。
とても面白い作品でした。
やはり伊坂作品は安定して
面白い本ばかりですね。

ハラハラする展開の中でも
少しふふっと笑えるシーンを
散りばめる伊坂ワールド全開の作品です。



魅力的な登場人物たち


まず思い浮かべるのは
何と言っても親友の森田森吾でしょう。
彼は名字と名前どちらにも
「森」の漢字が入っていることから
森の声が聴こえる、という
残念なユニークな人物です 笑

青柳雅春が逃亡中に駆使した
大外刈りの師匠でもありますね。

普段は掴みどころのない
立ち振る舞いなのですが
青柳雅春とは信頼関係にあります。
茶化しつつも雅春の事を気遣っている、
この絶妙な関係性に私はとても
魅力を感じました。

この森田森吾の性格が私の親友に
似ている所があり、自分の中では
その友人に重ねて読んでいました。
だから私の印象に深く残っているのでしょうね。


キルオこと黒パーカーの男 三浦


仙台で起きている無差別殺人事件の犯人。
序盤にニュースか何かで
報じられるだけでしたが、
まさか物語に登場し、
雅春サイドに付くとは思いませんでした。
敵の敵は味方、という感じですかね。

軽自動車で突っ込んできた後、
ショットガン男とナイフで戦闘
するのですが、私は以前読んだ同作者の
グラスホッパー
に登場する、「蝉」に似てるなぁ
と勝手に想像しました。
(三浦は死亡するので別人物)

本人曰く味方するのは
単に面白そうなだけということですが、
後半雅春の偽物が匿われているという
病院の場面では、偽情報を流した
警察サイドの人間と格闘の末、銃撃されてしまいます。

それにもかかわらず雅春に対しては
気丈に振る舞い全てを語った後、
役目を終えたかのように息を引き取ります。

この辺はもう三浦を応援してましたよ。ええ。
無差別殺人犯なのにですよ。

めちゃくちゃ悪い奴ですが
雅春に立ちはだかる悪が巨大すぎて私の感覚が麻痺してたんでしょうね。

殺人ダメ、絶対。


雅春の父


殺人で思い出しましたが、
雅春のお父さんがこんな事を話していましたね。

「人を殺すのはナシだが、例えば家族を守る為に殺してしまう事はあるんじゃねえか。俺はそういうのはアリだと思ってる」(台詞はうろ覚えですごめんなさい)

という台詞。
確かに自分の大切な人が脅威に晒されている時、
果たしてその犯人を殺さずに
無力化するという判断ができるでしょうか。


私にはできないかもしれません。


その大切な人を守るためなら、
その脅威を一刻も早く
排除する為に行動するでしょう。
それこそ手元に拳銃があれば
迷いなく引き金を引くでしょうね。(例え話です)



ビートルズのゴールデンスランバー


この作品のタイトル、ゴールデンスランバー
ビートルズの同タイトル曲から
取っているのは言わずもがなでしょう。
雅春や森吾が口ずさむシーンが
多くあります。

この曲の歌詞なのですが、出だしが

「Once there was a way to get back homeward
家に帰る道が、昔はあったんだ。

Once there was a way to get back home
自分の居場所に帰る道が、昔はあったんだけれど」

という感じになっています。
これは次々に居場所が無くなっていく
雅春たちの事を表しているようですよね。

もうあの頃には戻れない。

しょうもない話で盛り上がった
学生時代には戻れない。
という切ない思いを抱きながら
雅春も、森吾も、口ずさんでいたのでしょうか。


私がこの作品を読む前に聴いた時は
正直あまりいい曲とは思いませんでした。
しかし、読み終わって聴いてみると
雅春達の事が思い浮かび、
空で口ずさむ程好きな曲になりました。
(影響を受けやすいのです)

しかし、本を通じて自分の世界が
広がる事もまた、読書の醍醐味だと
私は思っています。



結論 とても面白い作品 90点


当作品は中村義洋脚本で映像化
されていますので、私も機会があれば
是非観てみたいと思います。

以上、伊坂幸太郎さんの
ゴールデンスランバーの感想を
まとまりなく述べました。


最後に一言。



「痴漢は死ね!」