縁の下のもち

読んだ本の感想や、日々感じたことなど書きます。

道尾秀介 向日葵の咲かない夏

読了しました。

この作品はおすすめミステリー小説
で検索すると必ずと言っていいほど
ランキング入りしているので
以前から読んでみたい、と思っていました。
作者の道尾秀介さんも、最近はよく
テレビ番組に出演されているので
ご存知の方も多いと思います。
私が道尾さんの作品を読むのは今作が初めてでした。

まず全体の感想としては、


「そんなのありかよっ!!!!」


という感じでしょうか 笑



死んだら生まれ変わる


なんと言ってもこの生まれ変わりシステム。

まさかミカちゃんがトカゲに
生まれ変わっていたなんて…


これは明らかにミスリードを誘う
書き方がされていて
ミカちゃんがS君を食べてしまう場面まで
全然疑うこともなく、気づきませんでした。



ミチオが岩村先生の家に忍び込んでいる最中、
先生が帰ってきてしまう場面。

ミチオは先生がミカには気付いたが、
似ている子だと思ったのだろう。
とか言ってますが、
そんなことはありません。先生は玄関前に
トカゲ(ミカ)がいるのを発見し、
立ち止まっただけなのでしょう。

確かに、家に帰ってきてドアの横に
トカゲが居たら一瞬立ち止まりますよね。
たったそれだけのことだったんでしょう。



しかしこの生まれ変わりですが、
生まれ変わった生き物が会話をしているのは
ミチオ君と、生まれ変わった
生き物たちだけなんですよね。


本当に生まれ変わりだったのでしょうか?


本当は生まれ変わりなど無く
全てミチオ君の妄想だったのでは?
とも考えたのですが、
トコお婆さんからヒントを貰っていますし、違うのかなぁ。よくわかりません。




六村かおること岩村かおる先生

ただの変態です。






衝撃のラストシーン


ミチオ君が自分の物語に終止符を打つ為、自宅に放火し自殺を図りますが
燃え盛る炎の中両親が窓から
投げ落としてくれたことで一命をとりとめます。

怪我は負ってしまったが
ミカを死産してしまってから狂ってしまったお母さんも
生まれ変わったかのように穏やかになり、
家族全員揃ってめでたしめでたし。
幸せな家族に後ろから夕日が当たり、
長く伸びた影が一つ、という描写で終わります。


ここは少し鳥肌が立ちましたね。


通夜に行って葬儀の説明を受けていることから
人間の姿で生きているのはミチオ君だけなのでしょう。
恐らく火事の際ミチオ君を助けるために
両親は犠牲になったのでしょう。

先程お母さんが生まれ変わったかのように、
と言いましたが本当に生まれ変わっていたんですね。

何に生まれ変わったのかは言及されていませんが
私の想像ではお母さんはギャーギャーうるさい油蝉、
お父さんは間違いなくカメでしょうね。



よく練られた作品 80点


ほんとに構成がよく練られています。
巻末解説にもあるように、
主観をモチーフにした小説を書くというのは
とてもデリケートで難しいことだと思います。

少し疑問は残りますが、
最後までハラハラしながら読むことができました。

道尾さんの他の作品も読んでみたくなりました。

以上、向日葵の咲かない夏の感想でした。